鉄板映画：『男の敵』（1935年：ヴィクター・マクラグレン、マーゴット・グレアム）

「鉄板映画：人気スター映画のブログ」女のために仲間を売った男が追い込まれていくサスペンス映画。バカな男、冷徹な組織、翻弄される女たちに注目です。

１．ストーリー
殺人容疑で追われるかつての仲間を警察に売ったが、自ら破滅していく。

２．キャスト
ヴィクター・マクラグレン（酔っぱらい）
マーゴット・グレアム（町の女）
ヘザー・エンジェル（仲間の妹）
ウォーレス・フォード（かつての仲間）
プレストン・フォスター（指揮官）

３．注目のシーン
①アイルランド
1922年、ダブリン。殺人容疑で警察に追われるフランキー・マクフィリップ（ウォーレス・フォード）。母と妹メアリー（ヘザー・エンジェル）に会うため町に戻ってきた。

②仲間
文無しのジッポ（ヴィクター・マクラグレン）。かつてアイルランドの自由のために戦った男だが、命令に従えずにアイルランド独立派グループから追放された過去。今では落ちぶれ、町で客を取る恋人ケイティ（マーゴット・グレアム）に食わせてもらっている。

③裏切り
アイルランドを去りたいケイティ。しかし、それにはカネがかかる。フランキーの首には20ポンドの懸賞金。ジッポはケイティのためにフランキーを売ろうと警察署へ。

④キャラ
ジッポはどうしようもない奴。身体がデカくて腕力はあるが、ただそれだけ。フランキーは家族思いだが、所詮は殺しで追われる男。アイルランド独立派を率いる指揮官ダン・ギャラガー（プレストン・フォスター）は組織を守るため、「フランキーを売った人物」には容赦しない意向。フランキーの妹メアリーはギャラガーと恋仲であるが、争い事を求めない性格。フランキーの母は悲しい存在。ケイティもまた悲しい女。他に、ジッポを「王様」などとおだてる男、盲目の男、もぐり酒場を経営するガメツいオバハン、ジッポを最初から「密告者」と疑う男。

４．感想
ジョン・フォードはこの作品でアカデミー監督賞。「ジッポ」役のヴィクター・マクラグレンはアカデミー主演男優賞。テーマは「裏切り」。何とも言えないほど愚かなジッポ。仲間を裏切り、ウソをつき通そうとする。しかし、不器用なため、良心の呵責を酒で紛らそうとして墓穴を掘りまくる。アイルランドの戦い、というより、ウソつきが破滅する姿を見せる映画。文無しのジッポは酔っぱらってあちこちでカネを派手に使う。カネの出所など言えるワケがないためウソをつくが、使ったカネの合計とフランキーの懸賞金が同じですぐにバレてしまう。バカだが「仲間を裏切る卑劣さ」を認識しているため、ジッポはその苦しさを自ら吐き出す。「ウソが巧い裏切り者」ならラストシーンはまた違ったものになっていたでしょう。見所は、フランキーの指名手配ポスター（悪そうな人相。実際は明るいキャラ）、密告するジッポ＆冷ややかな視線の警官たち、銃撃戦、フランキーの通夜、警官をワンパンチKO、もぐり酒場での出来事、組織の会合（熱演で大ウソをかますジッポ。周囲の冷たい視線。そのコントラスト）、逃走＆教会での出来事。ジリ貧のアイルランド解放闘争を描いた映画。ギャラガーにジッポを裁く資格があるのかどうか、にも注目です。

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